この度、17日を費やし大阪~本土最西端・長崎県は神崎鼻まで720㎞を歩いてまいりました。(2019年2月8日~24日)

旅の動機
昨年12月初頭カメラフォルダを漁っていたところ、昨春京都くらま温泉まで50㎞を徒歩で向かった際の写真を見つけ、そんなこともしたなぁと感慨にひたっていました。そんなときふと思いました。
これ繰り返したら遠くまで行けんか?
大馬鹿のトロけた脳みそは青春18きっぷや自転車、ヒッチハイクといった大学生の凡庸な旅と一線を画すその非常識さに急速に沸き立っていったわけです。そこでネットで徒歩旅について検索をかけました。
西日本横断やっとるやつおらんやん。やるか。
そんなこんなで果たして動機と言っていいかも分からない一時的な思い付きだけでこの旅を開始する運びになりました。そしてこの男は激しく後悔することになります。絶対真似すんなよお前ら。
ルール(テーマ)
大きく二つのルールを設定しました。
1. 移動手段は“徒歩”のみ(ヒッチハイク等も禁止)
2. 原則として“野宿”する(バッテリー充電のためのネカフェ等はOK)

正直2は貧乏学生なんで宿とる金無かっただけなんですけど。
旅のルート
基本的にはGoogleマップ大先生の示したルートに従いつつ、勾配のきつそうな山道は適宜迂回する案も考量して決めてました。
1. 箕面市~神戸市
2. 神戸市~たつの市
3. たつの市~備前市

4. 備前市~倉敷市
5. 倉敷市~福山市
6. 福山市~三原市
7. 三原市~東広島市
8. 東広島市~広島市

9. 広島市~
10. ~防府市
11. 防府市~下関市

12. 下関市~宗像市
13. 宗像市~福岡市
14. 福岡市~糸島市
15. 糸島市~唐津市
16. 唐津市~佐世保市

17. 佐世保市~神崎鼻公園
・本州編:46㎞/日 ・九州編:36㎞/日 ・全行程:42.3㎞/日 ・総計720㎞
私のスペック
結構瘦せ型で171㎝51㎏(出発前)です。運動音痴で体力が無く高校は帰宅部で、大学でもノンサーです。(後者は陰キャなだけでは?) どれくらい運動の苦手かは“親しい友人とやるお遊びのスポーツであってもやりたくない”くらいです。
これ共感してくれる人絶対いると思うんだけど。
じゃあ何でこんなことをしたのかは謎です。あと事前のトレーニング等は期末試験を言い訳に一切してませんでした。まぁともかくこんなモヤシでも歩ききれます。つまりやる気さえあれば誰でもなんとかなるということを言いたいわけです。
装備
・安物リュック55L(新品だったのに旅中ぶっ壊れたのはキレた。)

・マウンテンパーカー1着
・スウェット(上)2枚
・ジョガーパンツ1枚
・ウインドブレーカー(下)1枚
・下着(上下),タイツ各3枚
・手袋(薄手)
・靴下(長短)各3足(マメ対策に二重履きしてた)
・暖かい靴下(就寝用)1足(絶対買っとけ)
・安物シュラフ(寒かった)
・バッテリー2台(25000mAh,10000mAh)(6~7日くらい?)
・バスタオル1枚
・歯ブラシ
・手帳
……計11㎏
あったら良かったもの
・ペンライト:意外と日没早いから、路側帯しかない山道とかは危ないシーンが結構あった。あと野宿のとき何かと明かりが欲しいときがあった。
・日焼け止め:2月でもクソ日焼けした。風呂には毎日は入れないんで肌のダメージがとんでもなくなり顔がボロボロになった。

兄に脱獄犯と言われた。
・定額音楽サービス:とにかく歩かざるを得ない一日では、音楽が唯一の娯楽であるので旅する月だけでも契約してとにかく大量に楽曲をダウンロードするといいと思う。10h以上は歩いてるので意外と同じ曲すぐ飽きる。
一日のサイクル
・4:00~7:00:寒さに目を覚ます。安物シュラフが残念過ぎて毎朝身体を震わせてました。
(+1~2h:準備と朝食
↓
・12:00~14:00:昼食(1h)
↓
・19:00~22:00:夕食(1h)
(+1~2h:就寝
このサイクルの中で一日中ひたすら歩き続けています。他は何もしていません。歩くだけです。歩きの部分はとくに語ることも無い。
休憩は1~2h毎にコンビニや公園をあったところで小休憩してました。コンビニは食事においてもほぼ毎食利用してたし真夜中でもずっと開いてるので、生活の中心、我が家くらいには心の拠り所だったと思います。ありがとうコンビニ。
ちなみに食事はパックのご飯と焼き鳥1本の組み合わせをよくしてました。普通の弁当よりコスパ強めなのでおススメです。あと一日とおして苦痛に満ちてるので、幸せを感じるのは寝る前だけでした。ホントにバカな毎日で自分を恨み続けてました。
本旅に対する所感
・心を削る地獄
歩きでの長距離旅は肉体よりも心が酷く摩耗します。というか40,50㎞程度では翌日身体バキバキとかはならんのかなと思います。
徒歩というのは思っている以上に本当に前に進みません。数字に起こすと分かりやすいですが、車でたった一時間ほどで行ってしまう距離しか進めない。
なので全くもって移りゆかない景色、延々と続くアスファルト、減らない旅程、とにかく気力が減退していきます。

特に思い出深いのは、自身の歩いた感を裏切るかのように交通標識の「“地名”X km」の数字が全然減ってくれなかった事で、それが目に入るたびに削れた心がボロボロ崩れていました。一日の大半において精神状態はゼロ以下をさまよってます。

ノンサーもやしには負荷が大き過ぎました。地獄。地獄。
・旅を充実させる方策
“如何にしてモチベーションを高い位置に持っていきそれを維持していくか”
これが旅の充実に最も重要なわけです。旅を通じて特に寄与するであろう事由をいくつか挙げようかと思います。
第一に“予算”です。
夢も希望もない話ですが予算の多寡が一番肝要かなと感じました。
というのも、各地の美味しいものを食べ呑み出来たり良い宿に泊まることが出来るといった分かりやすい部分は勿論ですが、銭湯に行ける頻度だとか食後や休憩にコンビニスイーツを食べようだとか細かい日常の部分においてのモチベ回復が見込めます。

また予算が多くあればそれだけ余裕をもった(一日の歩行距離が少ない)旅程を立てられますから旅の一日一日に楽しさを見出したり出来るのかなと思います。
第二に“テーマ作り”です。
ただ最終目的地を設定するだけではなくて、“東海道五十三次のルートを辿る”とか“九州各県の銘酒を呑む”とか旅の全体に意味付けをしてあげることで道中が充実していっただろうと考えます。
また“徒歩縛り”に関しても、各地の名所や都市に寄れないこともよくあるので“必ず元の駅に戻ってくることを条件にして観光目的で交通機関を使用してもよい”といった甘えを設けても良かったかなと思っています。
個人と文明
文明、技術発展の偉大さを強く感じることができます。旅を終えて17日ぶりに乗ったバスの車窓から、自分が一歩一歩噛みしめてきた道が流れるように消えていく様を眺めたあの時、
俺の努力は一体?
とか切なさをメインに様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざりながら胸をはち切らせてました。これは金では得られない感覚で貴重な経験だったかと思います。金で買えても要らんくね?
達成感とか諸々
何とか西日本を横断したわけですが、最西端に到達したことそれ自体への達成感はそれほど大きいものではありませんでした。
神崎鼻についたときはせいぜい“ようやく終わった”“こんなもんか”って感じでしたね(嬉しかったのには間違いないが)。
それよりも濃ゆく感じたのは旅の全体をとおして“自分との約束を守り続けたこと”に対する達成感だったり感慨でした。
先述したとおり精神が弱っていくなか、
“別に誰か知ってる人に見られてるわけではないのだから一駅分くらい電車かバス乗っていいんじゃない?”
“徒歩に拘ったとして何か貰えるわけじゃないやん”
と悪魔にささやかれる瞬間が幾度となくありました。しかし何だかんだといってもう少し歩いてみるかとやってく内に結局徒歩だけで全行程を消化しきりました。

そういった意味で、拘束力の乏しい約束事を負担の大きい状況のもとで最後まで遵守できたという事が、個人的にはこの旅を総括するにおいて最も大きな果実だったと思います。打たれ弱い自分でもある程度は頑張れるのだなと多少の自信がつきました。
総括
結構しんどかったですけど貴重な経験を出来てやって良かったかなと感じてます。肉体的なハードルは割と低いので、最近何もしてないなってなってる暇人大学生はやってみてもいいのかなと思います。
徒歩旅しようと考えてる救いようの無いバカ同志の参考になれば私としても崖から突き落とす気分でとても幸せです。まあもう二度とやりたくないです。次は楽しい旅をしたいものだなと思います。
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