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AシートVSプレミアムカー、徹底比較してみた:JR西日本Aシート編

執筆者の写真: コフンねこコフンねこ

更新日:2019年6月24日





鉄道による通勤・通学の様相が大きく変化しつつある。





『着席サービス』の登場と普及―誰しも皆満員電車に耐えなければならない時代から、「お金を払えば座れる時代」へ。




一口に"着席サービス"と言ってもその内実は様々だ。



全車指定席の電車(特急orライナー)に加え、普通の通勤電車の中の1両だけが特別車両になっているケースもあり、追加料金の支払い方に関しても「事前購入」「車内で購入」「どちらも可」の3種類が存在する。



料金としては概ね500円前後、多くても1000円未満といったところ。着席サービスを備えた電車はただ「確実に座れる」だけでなく、設備面で通常の電車・車両よりも随分快適。



これが東京の都市圏でウケ、なんとしてでも座りたい仕事に疲れたサラリーマンを中心に『着席サービス』が好評を博していると言う。






関西にもこの一大ムーブメントが訪れた。






大阪南部を走る泉北高速鉄道の「泉北ライナー」を嚆矢とし、その後京阪電鉄が特急用の編成に一両分「プレミアムカー」を導入。



そして今年3月、JR西日本が在来線の看板列車・スピード自慢の"新快速"で新たな着席サービス「Aシート」が開始。



Aシート車両が連結された新快速は毎日2往復姫路↔野洲間で運転されており、京阪電鉄プレミアムカー特急の大阪(淀屋橋・京橋)↔京都(七条など)と真っ向から競合する。



つまり、Aシートの登場によって京阪電鉄とJR西日本の間で「京阪間着席サービス戦争」が勃発したってことだ。




この戦いを見過ごすわけにはいかない。




『JR西日本の「Aシート」と京阪電鉄の「プレミアムカー」、どちらが優れているのか?』



ケチで有名な関西人にとって、「どちらがお得か」はかなり重要。今回はこれをじっくり比較検討していくぞ……!





①新快速『Aシート』


新快速って何?

JR西日本の『新快速』は簡単に言えば「追加料金ナシで乗れる日本最速の列車」だよ。



なんとその最高時速は130㎞/h。下手な特急列車よりもよっぽど速い。



運行区間は北陸線(湖西線)・東海道線・山陽本線の三路線にまたがっており、北東端は福井県敦賀市で最西端は兵庫県の赤穂市。単に速いだけじゃなくて、運行区間も長い



他社線との熾烈な争いが繰り広げられている大阪↔京都間は最速29分で結ぶ。実は新幹線を利用するのとほとんど変わらない(※新大阪駅で在来線列車と新幹線列車を乗り継ぐ場合)。



京阪間の旅客輸送に関しては名実ともに最強最速である。




そんな化け物みたいなスペックの「新快速」、日中は毎時4本、つまり15分に1本以上運転されてる。



確かに本数は少なくないけれど、最速最強の名に恥じぬ人気を誇っているため連日大混雑を見せる。



特に京都↔大阪↔神戸の大都市区間はヤバくて、12両もつないでいる新快速の車内がパンパンになることも多々あるらしい……




新快速『Aシート』の概要と利用方法

そんな新快速の利用状況と着席需要を鑑みてJR西日本が新たに設けたのが『Aシート』と呼ばれる着席サービス。



着席サービスを拡大しつつある日本各地の鉄道会社の方針に乗っかった形だ。



新快速に使用される12両編成の電車の京都側の先頭から4両目の車両を改造し、3ドアを前後2ドアに、車内にはやわらかい暖色系の照明とコンセント付きリクライニングシートを配した『Aシート』だが、



現在は試験的な段階で、改造を受けた車両は1本のみ、運行区間も野洲駅(滋賀県)~姫路駅(兵庫県)と短い。したがって1日2往復(平日と土休日で固定ダイヤが異なる)にとどまっている。狙わないと乗れないってことだ。



利用方法はとっても簡単。乗車し、着席した後、車内で乗務員さんから整理券を500円で購入する。事前の準備や指定券の購入は一切必要ない。交通系ICカードでの支払いも可能。



確かに気軽に利用できる反面、車内で整理券を購入する関係で列車が来るまで本当に座れるかどうかはわからない



着席サービスではあるけど、実際に座れるかに関しては運の要素も絡んできてしまうワケだ。




実際に『Aシート』を利用してみた

ココは大阪駅の新快速・快速のホーム、8番のりば。土曜日の夕方、遊びや休日出勤や塾や学校から帰る人であふれかえっている。



見渡す限りの大行列。先ほども述べた通り、新快速はその速さゆえに大人気&大混雑の列車である。しかもこの日はダイヤが乱れていたからなおさら混む。



1本前の新快速が発車してすぐ、次の新快速を待つ人々がゾロゾロと並び始めた。



次の新快速は『Aシート』付き。1両に前後二つのAシート車両待機列にも一人か二人既に人の姿が見られる。



僕も前から二人目の位置(一応先頭)に陣取った。




てかなんで列車の来る15分も前に、しかも先頭に並ぶ必要があるんだろう。



『Aシート』最大のメリットは事前予約や事前購入を必要としない「気軽さ」にあるのに、と思ってしまう。



天下の大阪駅。新快速の途中駅の中でも最も乗り降りの激しい駅だ。他の普通車の待機列においても先頭に並んでいれば十中八九座れるだろうに……




快適?な車内設備

17:15の定刻をちょっと過ぎて、『Aシート』を連結した新快速がやってきた。




Aシートの待機列にも結局は8~10人ほど並んでいた。係員の方が何度も「ここは有料座席の列でございます!」と案内していて残った人数がそのくらい。思っていたよりも多いぞ。



普通車の列には20人以上並んでたけどね……




大阪駅でそこそこ人が下りたので、車内はある程度自由に座席を選べる状況だった。2×2列のリクライニングシートが並ぶ。



とりあえず座っておく。座って待っていると乗務員さんがやってくるので、こちらが500円を支払い、整理券を購入する。





余談だが、どう考えてもこのシステムは非効率的だと思う。



通常12両編成の新快速の車掌さんは一人。でもAシート車両には整理券の発売のために2人の乗務員さんがいらっしゃる。2人でも忙しそうだった。人件費もかかるよね。



利用者側からしても整理券を事前購入できたほうが確実に座れるメリットを享受できるし、車内で乗務員さんが回ってくるまでの間ソワソワして待つ必要もないからね……




整理券の購入に難があるとはいえ、座席自体はめっちゃ快適だ。



結構倒れるし、前の座席の下に空間があるので脚も楽々伸ばせる



大きなテーブルとコンセントも備えているから充電やPCの使用にもバッチリだ。ちなみにWi-Fiもあるよ。




一応普通車についても触れておくと、新快速普通車の座席は「転換クロスシート」で、追加料金不要の列車の中では比較的快適とされている。



また、最高速度130㎞/hのスピード感とそれに伴う揺れは普通車はおろかAシート車両にもあるから、それが嫌な人にとってはAシートすら快適ではかもしれない。



それでもAシートはスゴイ。


乗り慣れた新快速のちょっとした変化。実用に特化したリクライニングシートと暖色系の照明が織りなす絶妙な空間。気づけば京都駅に着く直前まで寝入っていた。



『Aシート』のメリット

  • 事前の準備、予約、購入が一切不要で気軽に利用できる

  • 広々と足も伸ばせるリクライニングシート

  • コンセントやテーブルもついていて充電や電子機器の使用も快適

  • Wi-Fiが使える


『Aシート』のデメリット

  • 列車の到着まで座れるかわからない

  • まだ試験段階であるため特定の時間の列車を狙う必要がある

  • 結局列の先頭で待ってしまう

  • 乗務員さんが大変そう

  • 揺れは結構激しい




『Aシート』の今後は?

車内の設備自体はJR西日本の特急列車並みで、かなり快適であると言えよう。



でも、「車内で整理券を購入する」という性質上、完全な「着席保証サービス」とは言い難いのが現状だ。



結局のところ、「たまたま駅に向かったら次の新快速がAシート付で、他の車両が混んでそうだからとりあえずAシートにしようかな」くらいの軽い気持ちで乗車するのが一番お得かも?




それなら大阪↔京都くらい特急列車の自由席を使ったらよいのではないか、とも考えてしまう。



特急「スーパーはくと」。

自由席特急券なら事前購入も可能だし、「サンダーバード」など自由席の両数も多い特急列車なら『座れない』ということはないはずだ。料金も650円で、Aシートとは150円差で済む。なにより、本数がAシート新快速より多い




しかし、実際大阪→京都でAシートの乗車率は6~7割程度と比較的高く、その大半が京都を超えて滋賀方面に向かうお客さんだったと記憶している。「サンダーバード」では滋賀方面の需要を満たせない。



したがって長距離を移動する方を中心に今後Aシートの利用客は増えていくだろう。そうなれば、Aシート車両自体も増加し運行本数も増えていくはず。



それに伴って「車内で整理券を購入する」以外のシステム、例えばネット予約などが始まると便利だな、と強く感じた次第だ。




(コフンねこ)

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