
2019年7月30日、関西圏に衝撃のニュースが走りました。
もちろん、この駅名変更については賛否両論あります。
ネット上の反応を見る限りでは、概ね「わかりやすくて良い」との賛成派と、「え、変えるの…?」との反対派に分かれているようです。

賛成意見も反対意見もよ~くわかります。
この記事では、大阪に来て約2.5年間ずっと阪急電車を使い続けてきた僕の立場から、阪急電鉄『駅名変更』の利点と欠点をまとめておくことにしました。
【駅名変更のいいところ】
1.初めての人にもわかりやすい
『大阪梅田~梅田終点です。阪神線、地下鉄線、JR線はお乗り換えです』

阪急の大ターミナル『梅田駅』に到着する際、車掌さんはこのような放送を行います。車内・駅構内のアナウンスや様々な表記の面で『大阪梅田』と案内されているのをご存じでしょうか。
梅田が大阪市内の街の一つであり、JR大阪駅との接続駅であることを強調するアナウンス。

これは我々の阪急梅田駅こそが『大阪』であると主張しているようにも感じられる……
京都側のターミナル『河原町駅』の場合も同様、『京都河原町駅』と呼ばれるケースがほとんど。

正式な駅名こそ『梅田駅』『河原町駅』ですが、既に案内上では『大阪梅田』『京都河原町』とされているんですね。
「梅田」「河原町」…関西人には親しみ深い地名である一方、同様の地名は全国にあるし、観光客・訪日外国人にとってはそれらが「どの都道府県に位置するのか」すらわからないかもしれません。

「案内では大阪梅田・京都河原町と呼ぶ」ことは、ある意味でこうした問題の解決策でもあるわけですよ。
そこからさらに発展させて、「案内上の駅名と正式な駅名を統合」したのが今回の駅名変更の核ではないでしょうか。
『石橋阪大前駅』の場合も同じ。

『石橋駅』は大阪大学豊中キャンパスの最寄り駅。しかし、阪急には「豊中駅」もある。
間違える方は意外に多く、受験期などは大学も必死になって「阪大の最寄りは石橋」と主張しているんです。

『石橋阪大前駅』への変更も、「実際の駅名」と「地理的な関係や案内」との倒錯状態の解決策と言えるでしょう。
結論
=駅名変更によって、地理的な位置関係がよりハッキリわかりやすくなる。
2.「わかりやすさ」による誘客
外国人観光客が増え続けている昨今。彼らが利用するのは「わかりやすい駅」です。

失礼な話ですが、右も左もわからない観光客にとって「梅田」「河原町」よりも「JR大阪駅」「JR京都駅」のほうがずっとわかりやすい。
伏見稲荷大社の最寄り駅である京阪電鉄の「伏見稲荷駅」の乗降客数が伸び続けているのも、一つにはその駅名がわかりやすいからでしょう。
つまり、1.で述べたような「駅名のわかりやすさ」はそのまま利用客数に直結しうるわけです。
客数増はそのままその駅があるエリア周辺での消費増にもつながるので、経済活性化にも効果あり?
結論
=駅名をわかりやすくすると客数が伸びる可能性大。
【駅名変更のわるいところ】
1.本当にわかりやすい?
「既に案内上では『大阪梅田』『京都河原町』などと呼んでいるのだから、それでもういいじゃないか」

いやー、まあ実際コレですよね。何をいまさら正式に変えようとしてるんだと。
誤解を恐れずに言えば、阪急ユーザーのほとんどは地元民。これは阪急が沿線開発をしながら路線を作っていったからでもあります。
一方観光客は新幹線や関西空港などからの乗り換え便利で外国語放送も充実しているJR線を使っている印象が強い……

ならば、地元民が愛着を持っている現在の駅名を維持したほうがよかったのでは?と思っちゃいます。
結論
=いまさら「わかりやすく」変更したところで効果はあるの?
2.伝統を捨てるの?
「梅田」「石橋」は現在の阪急宝塚線が箕面有馬電気軌道として開業した約130年前から続く伝統の駅名です。
阪急は『伝統を守る鉄道会社』としてマニアに知られています。

各鉄道会社が車両更新のたびにカラーリングや内装を刷新するのに対し、阪急では「マルーン色の外装」「木目調の内装」「ゴールデンオリーブ色の座席」といった基本コンセプトを変えません。
駅名に関しても同様です。ほかの会社では当たり前になった「カタカナ外来語の駅名」が阪急には一切ない。こういうこだわり、かっこいいですよね。
今回の駅名変更に話を戻しましょう。
案内では「大阪梅田」「京都河原町」などと呼んでいたのに今まで駅名を頑なに変更しなかったのは、こうした『こだわり』によるものだったはず。

阪急沿線民は阪急の伝統を重んじる姿勢に愛着を持っています。「決して阪急の駅が最寄りじゃなくても無理矢理阪急を使う人は多いんだよ」、とTVで中川家礼二さんも言ってましたもん。
それだけ阪急ってハイブランドなイメージなんです。だから愛されている。
なのに…どうして……。急な変更にとまどっている沿線民は意外と多く、僕もその一人だし、ネット上には同志がたくさんいました。
なんでも伝統を守るのが良いわけじゃないのは重々承知ですが、阪急みたいなこだわりの強い会社でも伝統の駅名を変えちゃうんだ…みたいな悲しみが関西に広がっているのは事実です。
結論
=伝統を重んじる姿勢がかっこよかったのに、どうして変えちゃうの?
「駅名変更」に対する正直な感想
公式プレスリリースでは、今回の駅名変更が「わかりやすくするためのモノ」と明記されています。

確かにわかりやすくはなるでしょう。わかりやすい駅名に魅かれて利用客も増えると考えられます。
「それだけでいいのか?」
これが僕の正直な感想です。
本当に「わかりやすく」したいなら、もっと他言語対応や車内自動放送の導入を進めるべきです。
ほかの鉄道会社はこうした取り組みを既にやっていますし、実績を上げています。


阪急の場合、多言語対応は駅の電光掲示板や車内のドア上モニターのみ。しかも、車内モニターを搭載している車両は全体的にまだ多くありません。

加えて車内自動放送も導入されていない。車掌さんの肉声放送はかっこいいですが、関西イントネーションが混ざった肉声は観光客にとって決してわかりやすいモノではないはず。
駅名変更には電光掲示板プログラムの変更や各種駅名看板の取り換えなどいろいろコストがかかります。
そのコストを車内設備の更新や多言語自動放送の導入に充てられなかったのでしょうか。
そのほうがよほど観光客や訪日外国人にとってわかりやすく快適になるのに……
「駅名変更が良いか悪いか」よりもむしろ『なぜ駅名変更なの?』と強く思いました。

駅名変更をするくらいなら車内自動放送などの導入をするべきだし、そうでなければ伝統を守る方針を続けてほしかった。。。
※もしかしたら駅名変更は車内自動放送プログラム導入の布石かもしれません。動向次第でこの記事の内容が漸進的に変化することをご容赦ください。
(コフンねこ)
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