
瀬戸内へ……
どうも、はっか雫といいます。縁あって記事を書かせていただくことになりました。
はい、瀬戸内国際芸術祭についてです。3年に一度開催される現代アートのお祭りですね。
リンクどんっ。
こちら、春・夏・秋と3会期あり、かなり人が来る(前回の2016年で、のべ約104万人来客。すげー)。世界的にも注目されている芸術祭。
舞台となるのは、瀬戸内海の12の島と2つの港。カッケーですね。
そしてそして、舞台が複数の島にまたがっているってことは、移動は船ってことなんですよね。船、海、風、たまんねー!
現代アート、もちろん興味がある。展示会とか美術館とか、そこそこ行ってる方だと思う。でも、船、自然、美味いもの!
島が呼んでいる、私にはわかる。
「全部楽しめるよ」と島が手招きしてくる。
というわけで、いざ瀬戸内へ。
デカい船は好きですか?

私が行ったのは春会期。大阪在住のため神戸港からジャンボフェリーで夜の海に繰り出す。
とにかく船が好きなのと、朝になれば勝手に目的地に着いちゃうのが嬉しすぎるので、今回はJRではなくフェリー。豪華だねえ~。

瀬戸芸(面倒なので略しちゃう)の舞台は主に東西のエリアに分けられる。今回は、東部エリアの直島と小豆島に行くため、高松港を目指すことに。
というかぶっちゃけ、日本全国どこから出発するにせよ、高松港&高松駅(徒歩10分程度しか離れていない)を目指せばまず間違いない。今回は訪れないが、西部エリアに行くにしても高松駅からの移動が便利。

てなわけで早朝5時過ぎ、到着!
一度聴いたら一生残るでお馴染み、「二人を結ぶジャンボフェリー」で叩き起こされる。容赦ねえ。これも人生経験なので、全員下のリンクから聴くかジャンボフェリーに乗ってください。
高松東港で降りたら高松駅まで無料送迎バスが出ている。うれしい。

四国汽船の高速船切符売り場は、出航30分前から切符購入が可能。一時間くらい早朝で人通りの少ない高松駅周辺をぶらぶらした。乗りたいのは始発7:20の便。

やったー!直島上陸
着いた!
『赤かぼちゃ』どんっ!

実在したんだ。
鮮やかな赤と黒、そしてその先に突き抜ける空の青と穏やかな海の青。この『赤かぼちゃ』は直島の太陽そのものなのだ。異様で圧倒的な存在感をもって、まざまざと見せつけられる。
ここまでずっとバカテンションでやってたのに急に真面目なこと言っちゃったな。

このアスレチックみたいなのもマジでカッコいい。
『直島パヴィリオン』と名付けられたこのランドマーク、直島を構成する27の島々の「28番目の島」というコンセプトだそうで。
さきほど『赤かぼちゃ』に対して「実在したんだ」と言っちゃったけれど、こちらもこちらで現実と空想の境界に揺さぶりをかけてくる。
チャリ、乗りましょう
さて、どうしても始発便で上陸したかったのにはきちんと理由がある。
レンタサイクル開店凸!
やっぱりなんと言ってもサイクリングがしたかった。予約可能な店舗もあるけど、私にそこまでの高度な計画性はない。チャンスはパワーで奪うんよ。
開店15分くらいで自転車なくなっちゃうこともある(借りられたのは私たちで最後でした)ので、余裕のある人は予約を、朝から島に上陸する場合は開店凸パワーでゲットを。

ヒャッホウ!
まさに天国。だけど15分続く急勾配はさすがに地獄。計画性のある人は電動自転車を借りるかバスに乗りましょう。
でも、やっぱり自転車が最高です。島を半周しての感想です。暮らしが身近に見られるのがいい。海沿いの道をただひたすら登ります。
地中美術館だけは絶対行ってください
彩度100%の景色に囲まれてどこに向かおうとしているかというと、

直島に行くなら絶対に行ったほうがいい。行くと分かるんですが、鑑賞料2,060円は「安い」。こちらは事前にチケットを予約しなければ入れないので注意。
安藤忠雄設計の地中美術館は、景観を損なわないよう建物の大半が地中に埋まっている。
しかし地下であるにもかかわらず、館内には自然光が一日中表情を変えながら優しく降り注ぎ、地上にいるときよりも光と陰の動きを身近に感じ取ることができた。週一で来たいレベル。
クロード・モネの大作『睡蓮』が恒久展示されており、地中美術館はこの作品を展示するために造られたと言っても過言ではない。
『睡蓮』の購入をきっかけに構想され、そのために安藤忠雄が設計し、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの二人の現代芸術家に、このためだけの作品制作が依頼された。
全員に共通するのは、自然ととことん向き合った上で、それを各々の解釈に落とし込んでいる点だ。
写真がなくて申し訳ないが、勢い余って年間パスポートを買ってしまいそうになったほどだったので、ぜひとも静謐なひとときを心ゆくまで味わってほしいと思う。

あと、地中カフェは最高。瀬戸内海を一望できる。
珍しい瓶ドリンクがたくさんあって嬉しくなってしまった。ケーキと瓶を持って外へ出ると、理想のピクニックをやっている気分になれる、楽しい。

5歩に一回発見がある!本村エリアの魅力
さて、先程「チャリに乗れ!」とは言ったものの、ぜひ自分の足で歩いてほしいエリアもある。
それが本村エリア。
路地裏好きですか?好きですよね、好きに決まっている。
じゃあ本村エリア行くしかない。


瀬戸芸の魅力はなんといっても、島全体が舞台になっていることだ。
島の風景や、そこにある暮らしと芸術作品が見事に調和している。先程の地中美術館にしてもそうだ。景観を損なわない、いや景観そのものに溶け込むことを徹底している。
芸術作品を求めて散策すると島そのものの魅力に気がつくことになるし、何の気なしに散策していても芸術作品にぶつかるので新鮮な喜びがある。


それだけじゃなく直島は地元の方々がノリノリなのがいい。本当にこのサービス精神には脱帽するし、楽しんでやっているのがこちらにまで伝わってきて嬉しくなる。
直島の神さま、アートに出会う
何も考えずにゆっくり散歩したのは久しぶりだった気がする。
上陸したときから感じていたが、島に一歩踏み入れた瞬間からもう時間の流れ方が違う。波の音が島の一秒、といった感じで。気付いたら神社に辿り着いていた。
あまり下調べせず行っていたので、その時は本当に知らなかった。まさか神社が、

現代アートになっていただなんて。
この『家プロジェクト 護王神社』は、江戸時代からここ本村で祀られてきた神社の改装に合わせて設計されたそう。
『家プロジェクト』は、本村エリアに点在していた空き家そのものを、かつての記憶を折り込みながら芸術作品にするというアートプロジェクトである。どうりで突然ご対面してびっくりしたわけだ。溶け込みすぎている。
最初はただ「綺麗だな」という薄い感想しか出てこなかった。けれど違う。本殿に近づけば近づくほど、神々しさが増す。驚くほど緻密に計算されたバランスの上で、この空間は存在しているのだという肌感覚。
真上からまっすぐに太陽光が降り注ぎ、それを一身に受け止めるガラスの階段は、決して溶けることのない氷のようで、ただ静かで確かな意思を感じる。ただそこに在り続けるという意思だ。

この『家プロジェクト 護王神社』の本領発揮は、地下の石室である。そう、地下があるのだ。内部の撮影はできないため、ぜひとも実際に訪れて確かめてみてほしい。
石室を見た前と後では、本殿の方もまた違った印象で見えてくるので面白い。
生き続ける家、夢を見る
『家プロジェクト』は現在7軒公開されていて、そのうちの『家プロジェクト はいしゃ』にも行ってみた。

こちらは名前の通り、元は歯科医兼住居だった建物である。なんとも遊び心の溢れた外観で、家全体が踊っているかのような印象を受ける。とてもかわいい。

外観に関して言及すると、平面と曲面がぶつ切りなのに繋がっている、今と昔が混在しているといった感じで、こちらの視覚をかなり掻き回してくる。

その状態で内部に入ると、もう「???」である。「本当にここに住んでいた人がいたの?」「あ!昔の住人の痕跡が」の繰り返し。家が見ている夢をそのまま再現したかのような作品だった。
休憩したくない?したいよね

というわけで待ちに待ったお昼ご飯の時間!
『民宿石井商店・食堂』にお邪魔した。病的にうどんが食べたかったのだ。
めちゃめちゃ歯ごたえあって美味しい、そこへ生姜の風味が追いかけてくる。万能ネギ、鰹節、生姜という簡単な組み合わせだからこそ、出汁醤油の旨さが活きてくる。大満足してしまった。
オシャレな外観のお店が並ぶ中、戦中から地域に根ざしていた商店を改装してできたこちらは、観光客も多いが地元の方々の時間が流れる食堂だった。
店の前に並んでいる時に、えらく腰の曲がったおばあさんが大量のネギを背負って店に入っていったので、「ネギの配達員さん?」と思ってなんかめちゃめちゃ笑ってしまったけど、うどんを出してくれたのはまさにそのおばあさんだった。
店員やったんかい。
そういうゆるさが心地いい。テレビからは誰も観ていないローカル番組が流れ、地元客の絶えない食堂特有の雑然さに落ち着きを感じる。
アートというきっかけ

そろそろもう一つの目的地、小豆島に向かわなければならない。
瀬戸芸で一番気をつけなきゃいけないことが、船便を絶対に逃さないこと。下手すると島に取り残される。
それもそれで楽しそうではあるが、行き帰りの便の時間と乗り場、チケットの購入方法は必ず確認して、できることなら最終便の1つ前に乗るのが安心だ。

直島から小豆島の坂手港へ行く便が16時前発だったので、本村港へ向かう。チケット売り場があった。なにやらポコポコしてる。
『直島ターミナル』は、それ自体が芸術作品で、船の待合所、トイレ、島民の憩いの場、と多くの意味を持つように造られていて……やっぱりポコポコしていた。

おじいさんおばあさんが中で談笑していて、「本当に芸術作品が島に根を下ろしているんだ」、としみじみしていたら、談笑していたおじいさんがこちらへ来てチケットをちぎってくれた。
船の人だったんだ。

そうして高速船は一路小豆島へ。
船の心地よい揺れで、一瞬で眠ってしまった。
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